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伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師

 2018年に入り、農業や医療の分野で人工知能の活用が活発になっています。主に農業では、農作物がおいしく育つための環境を算出したり、画像で品質や病気の有無を診断したりするなどの活用が広がっています。

 医療の分野では、レントゲン写真や血糖値の数値などから現在病気にかかっているかどうかだけではなく、今後どのような病気になるリスクが高いかを人工知能に予測させる研究が進んでいます。両分野で人工知能活用が進んでいる理由の1つは、「課題と問題が明確化しているから」です。

 農業では農作物が病気になると甚大な被害を受けます。農作物に病気が発生せず、安定しておいしく、かつ大きく育つことは、それだけで生産者にとっても消費者にとっても大きな価値です。医療では、現代の知識や技術をもってしても完全に分からないことは多く、将来的な病気のリスクに関して精度の高い予測を立てることは大変難しい。加えて、診断に必要な多くのデータを集めるために幾つもの検査を受けなければなりません。それが、レントゲンを撮ったり、唾液を採取したりするなどの簡単な検査だけで病気が分かるとなれば、これは人類にとって大きな価値になります。

 では、製造業ではどうでしょうか?

マス・カスタマイゼーションが生む価値

 製造業における現在の課題といえば、「人手不足」です。しかし、人手不足の解消は企業内の問題であり、社内や製造上での問題解決にはなりますが、消費者にとっての価値にはあまりなりません。

 では、製造業が消費者に提供できる価値とは何でしょうか。生産工程のあり方を変革するプロセスイノベーションの視点から考えてみましょう。

 1つは、ドイツのインダストリー4.0でも目指している「マス・カスタマイゼーション」が考えられます。マス・カスタマイゼーションは、工場を自動化した上でソフトウエアや人工知能を活用して受注と生産計画の立案を行い、さまざまな仕様の製品をオーダーメードで大量に造ることです。ただし、これを実現しようとすると大きな投資が必要になります。

 工場をいきなり大きく変えようとするのは高いリスクがあって危険です。従って、小規模なカスタム生産から試験的に始めることが重要です。小規模な実験に高い資金を投資することはできません。そのため、手作りの生産工程を自分たちで製作しながら試行錯誤する必要があります。ただ、これには経営者や従業員に高い学習意欲と根気が必要で、決して簡単ではありません。それでも、半自動でオーダーメード製品を造る小さな工場などの事例は幾つかあります。顧客の要望にきめ細かく対応し、それでいて値段は高くないというのは、消費者にとって大きな価値になります。

 続いて、新しい製品を生み出すプロダクトイノベーションの視点から見てみましょう。