ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏

 「日経ものづくり」2018年1月号の特集「日本品質 復活への道」が目に留まった。昨年の12月号に引き続き、品質データ偽装などの品質不祥事を取り上げている。不祥事に共通する課題を見出し、その対応策を提言していた。

 その特集を読み、私にはいくつかの「思い」が浮かんだ。その思いとは、「お客様満足度100%の再認識」や、「このような不祥事を起こさない源流管理のありよう(注:特集は主に検査などの現場にフォーカスしているが、源流の取り組みの振り返りも必要ではないかとの思い)」、「お客様のニーズ(要求仕様)を把握することの難しさ」などだ。

 これらのうち、今回は「お客様満足度100%の再認識」について述べたい。先のコラムで少し触れたが、大切なことなので再度取り上げる。

 多くの人は、「お客様満足度100%なんて、入社以来さんざん聞いてきた。耳にタコができる」と思っていることだろう。だが、この「100%」には2つの見方があることに気付いているだろうか。「消費者の立場での100%」と「生産者の立場での100%」だ。

 消費者と生産者の関係は固定しているわけではない。平日の仕事では生産者でも、週末になると消費者の立場になることは多い。例えば、購入したばかりのクルマのボディーに少しでも傷があると、ディーラーに一言となる。これが一般的な消費者であろう。そうした人も、平日は生産者だ。生産者の立場での100%を意識して取り組まなければならない。

 しかし、生産者の立場での100%は簡単ではない。「こんなに夜遅くまで頑張っているのだから、これぐらいの傷は問題ない」。そう判断する場合もあるのでなないか。

 ここで言う「お客様満足度100%」とは、生産者の立場として100%を目指すことなのである。設計段階であれば、設計者として100%を目指すことが大切だ。設計段階の仕事は、まず計画を立てる。課題を抽出し、対応スケジュールを立てる。製品の新規性によって課題の数や難易度は異なるが、とにもかくにも、立てたスケジュールに従って設計を進めていく。

 課題の解決は、一般に時間軸に対して「S」字形カーブを描く。最初は課題の対処に少し手間取っても、時間とともに課題は解決に向かう。大部分の課題は時間とともに設計処置が取られていく。ところが、通常は1、2個の課題が残るものだ。設計的に詰め切れないし、いくら頑張ってもすっきりしない。こうした経験のある設計者は少なくないはずだ。