日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第20回:トルクベクタリング機構」の転載記事となります。

 コーナーを曲がる場合、重心とロールセンターの関係から、まずロール(車両左右方向への回転力)が起こり、それに対して抗力が高まることで旋回モーメントが立ち上がる。乗り心地を高めるため、サスペンションのストロークを大きく取ると重心も高まることになり、操舵によるロールは大きくなってしまう。

 近年人気の高いSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)は、車輪の外径が大きく、重心も高くなる傾向にあり、操作による姿勢変化も大きい。ロールが大きくなると横転の危険が高まり、内輪の接地性悪化によるアンダーステアが大きくなる。操舵によるロール量を抑えて、操縦安定性を高めることが求められるが、サスペンションの強化などによってロール剛性を高めることは乗り心地の低下につながりやすい。

 前輪の向きを変える旋回と異なり、トルクベクタリングは車輪に直接旋回モーメントを発生させるため、ロールの発生が少ない。後輪左右の駆動力を変化させるものは後輪操舵と同じく、わずかな左右差でも旋回モーメントを発生させることができるため旋回性能の向上に効果的なのである。

 トルクベクタリングは本来、左右輪の駆動力を制御してクルマに旋回モーメントを発生させるものであるが、制動力を制御して同様の効果を得ようという機構も自動車メーカーによってはトルクベクタリングと呼んでいる。これ以外にも前輪を操舵する以外に積極的に旋回性能を高める装置としては4輪操舵もあり、ドイツBMW社は車種によりこうした機構を使い分けている。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は申し込み初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら