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スタージェン会長、医療人工知能研究所所長 鎌谷 直之氏

 人工知能(Artificial Intelligence=AI)という言葉が流行する中、企業がAIを取り入れようとする動きが日増しに高まっている。一方で、これまで蓄積してきた事業や今後の事業にどのようにAIを活用し、結びつけていけばよいのか頭を悩ませている日本企業が多いというのが実態だ。「技術者塾特別編:技術の宝探し」の講座「『AIの本質を見極めて成功を勝ち取る事業戦略の立て方」に登壇する、スタージェン会長の鎌谷直之氏に、AIを活用するためのポイントを聞いた。(聞き手は近岡 裕、高市清治)

医療界でもAI(人工知能)を採用する動きはあるのでしょうか。

鎌谷氏:もちろんです。「AIについて知っている」というレベルではなく、「AIを使いこなす」時期を迎えつつあります。

 当社(スタージェン)は遺伝学や統計学、情報学に基づいて、創薬やヘルスケアICT事業、研究支援事業などを手掛けています。その一環としてAI事業も積極的に進めています。具体的には、ゲノム研究のための深層学習やアルゴリズム開発、単細胞研究のための深層学習アルゴリズムの構築、医療機器のデータ解析のためのアルゴリズムの構築、創薬のための深層学習アルゴリズムの構築などです。

 こうした業務を通して医療やヘルスケアの世界でも今後、IT産業や製造業と同様にAIの存在感が大きくなることを実感しています。例えば、客観的データに基づく個別化医療の普及と浸透です。日本は出遅れていますが、特に米国ではヒトゲノムの解読結果を活用し、がんなど病気の原因を遺伝子単位まで究明して、その人の体質や病状に最適な治療や投薬を行う個別化医療を推進する動きが急速に進んでいます。

 この時、AIが活躍します。1人あたり、さらには1細胞当たり30億個もあるヒトゲノムを次世代シーケンサーで解析。その結果を基にAIが診断治療の選択を実行するのです。

 AIは大量のデータを解析し、正確な結果を出すのが得意です。ゲノムのようなビッグデータを入手しやすくなり、コンピューターの処理速度が速くなった上に、深層学習の精度が極めて高くなったので、正確な診断治療を実現できる可能性が高いのです。医師の「経験」や「勘」に基づく主観的な診療は今後、淘汰されるかもしれません。

 最近は、画像解析の性能も急激に向上しています。患部の画像を解析して病状や原因を特定する精度も、AIの方が人間より優れている場合もあります。

 当社も手掛けていますが、「1人の人間」単位ではなく「1個の細胞単位」の医療も始まりつつあります。個々の細胞を調べた上で、取捨選択を行い、最適な診断と治療法を提供するのです。こうした膨大なデータに基づく精緻な診断と治療は、AIなくしてあり得ません。