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NECエンタープライズビジネスユニット 理事 山田 昭雄氏

 人工知能(AI)を活用して正確な予想を示すだけでは意味がない。予想の理由や、その予想を反映した対処まで提示する。これらの要素を基に、経営者らがより正確な判断を示せるようになる。これがAIソリューションの意味だ——。「技術者塾」の講座「『AIの本質を見極めて成功を勝ち取る事業戦略の立て方」の登壇者であるNECエンタープライズビジネスユニット理事(元NECデータサイエンス研究所長)の山田 昭雄氏はこう語る。必要なのは、AIを導入する経営者の明確な目的だ。(聞き手は近岡 裕)

NECデータサイエンス研究所は、NECのソフトウエア全般を研究開発する部署でしょうか。

山田氏:はい。IoT(Internet of Things)やネットワークを活用して集めたデータから、今起こっているファクトをコンピューターが理解し、それを基に未来を予測して、経営者をサポートします。顧客の業務改革(DX)を支援する先進テクノロジーの1つとしてのAIの研究開発が主な業務です。

データサイエンス研究所のミッションは、集めたデータの理解と未来予測に基づく業務改革支援の実現なのですね。

山田氏:そうです。もう少し具体的に説明しましょう。

 IoTなどを活用してデータを集めるだけなら、実は誰にでもできます。しかし、集めた「原データ」は通常、そのままで利用できるものではありません。余計なノイズや異常値が混ざっていたり、ブレが大きくて不安定だったりします。必要なデータを適切な品質で取り出す「データの良質化」を図らなければなりません。例えば映像理解であれば、撮影はしたものの暗部が大きい、解像度が足りない、さらには隠蔽されているといった問題の解決です。

 次に「識別・認証」をします。その人・もの・ことが誰あるいは何かについて、良質化したデータを人間同様に五感で複合的に認識し、今この瞬間の実態を判別します。例えば、映像に映っていた人を見分ける「顔認証」は世界最高峰として広く認知されているNo.1技術の1つです。他にも形状やサイズなどから、その製品の生産年や型式を把握する技術もあります。AIの基本的な機能の1つですが、さまざまな環境の変化に頑強に、また、リアルタイムに認識できることが特徴となっています。

 「それが何か」が認識できたら、次に「分析」をします。「それ」にどのような意味があるのかを理解し、過去から現在までの時系列の中で位置付けて、それぞれの関係性を探り出します。意味や意図、関係性などが明確になってきたら、解釈付きで未来を予測します。いわゆる予測・推論です。物事の関係性や流れからロジックや規則性を抽出すれば将来、必然的に何が起こるかを予想できる。この時、単なる予想ではなく、その根拠を併せて提示する点が当社の強みとなっています。

 最後に望ましい状況にするために、無数に存在するであろう選択肢から最も適切なものを瞬時に探り当て、それをアクションプランとして提示します。こうして得られたリコメンデーションをさまざまな意思決定の高度化に活用していただくわけです。

「示唆の高度化」で正確な判断を

業務上、重視していることは何でしょうか。

山田氏:私たちが重視しているのは「示唆の高度化」です。経営者らが何らかの判断をする際に、その判断がより正確に、高度になるように支援します。このような判断支援として採るべき選択肢の提示は、従来は、人が経験の蓄積によってなせる職人技ともいえる高度な知的活動でした。AIを使うことで、これを圧倒的なスピードと規模、そしてきめ細かさで実行することを支援します。

 一般的には、IoTやAIなどを活用する利点といえば「効率化」が思い浮かぶのではないでしょうか。事務作業や単純作業をスピーディーかつ正確に行う。こうした効果の訴求はもちろんやっており、既に多くの実績が出ています。同時に、中期的な新たな価値の訴求として、有能なブレーンを抱えるように、あるいはブレストでチームメンバーの力を借りてより良い答えを追求するように、異なる視点に基づいた示唆の高度化を実現することにも取り組んでいます。

 AIがどれだけ発達しても、結局最後に判断するのは人間です。その際、判断しなくてはならない経営者に選択肢と、その選択肢の背後にある考え方・ロジックを提示して、より良い判断ができるようにする。IoTやAIと人間との共生が、より良い社会の構築には大切だと考えています。