「自分たちは負けていない」という間違った現状認識によって、日本の電機産業は衰退した――。こう語るのは、約30年間にわたって半導体開発に従事し、ルネサス エレクトロニクスで主管技師長も務めた清水洋治氏だ。「技術者塾」において講座「半導体チップ分析から見通す未来展望シリーズ」の講師を務める同氏に、日本の電機産業が復活するために必要なことを聞いた。(聞き手は田中直樹)

テカナリエ 代表取締役の清水洋治氏
(写真:加藤 康、以下同じ)
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日本の半導体産業、電機産業はこの20年間、衰退の一途をたどっています。原因はどこにあると考えていますか。

清水氏:自分たちの会社や製品を客観的に見つめて現状を理解することができず、正しい判断ができなかった。これが本質的な原因だと考えています。日本のどの会社の内部資料を見ても、「自分の会社は勝っている」という資料ばかりです。「自分たちの会社は決して後れを取っておらず、世の中の流れにほぼ合っている」という内容の資料がどこの社内でも流通しているのを見て、私は大きな違和感を抱いていました。

 この違和感を最も強く感じていたのが、2000年代の半ば。ちょうどスマートフォン市場が立ち上がる頃です。日本のどの会社の資料を見ても、「海外には負けていない」というものばかりでした。このような資料ばかりを毎日見ていると、「自分たちは大丈夫。全く問題はない。世界の競合のはるか先を走っている」という錯覚を起こします。ところが現実は違っており、海外ではもっとダイナミックな新しい動きが起こっていたのです。

 例えば、チップセットやプラットフォームと呼ばれるものが、2000年代の半ばから海外で次々に立ち上がってきました。これらは、部分最適ではなく全体最適を求めるためのものです。勝負のポイントが部分最適化から全体最適化にシフトしているにもかかわらず、日本メーカーは部分最適化において自分たちは勝っていると言い続けていたのです。これが、スマートフォンやテレビでの敗北につながっていったと、私はみています。

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