1. はじめに

 第65回応用物理学会春季学術講演会が早稲田大学西早稲田キャンパスで3月17日~20日に開催された。その中から筆者が興味を持った講演を報告する。第9回は、秋田大学 准教授の山口留美子氏らによる「液晶素子の非線形光学応答における光強度の低減化の検討」と題した発表(発表番号:20a-A204-5)を中心に、多彩な液晶配向制御と新規な液晶応用デバイスの創製を目指した研究の概要を紹介する。

2. アンカリング力

 一般的な液晶デバイスは、2枚のガラス基板表面に施された配向膜によって基板間の分子の初期配向状態が制御されており、電圧印加により液晶分子長軸の配向状態を変化させている(図1)。これにより入射光の偏光状態が変化し、偏光板を通過する光強度が変化する。

図1 液晶配向膜のアンカリング力
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 配向膜上の液晶分子は表面に束縛されており、この束縛力は「アンカリング力」と呼ばれる。通常の液晶デバイスでは、アンカリング力は無限大として扱われることが多い。従って、電圧印加時にバルク中の液晶分子が電界方向に再配向しても、配向表面の液晶分子は表面に固定されて変位しない。電圧除去時に元の分子配向状態に戻るのは、このアンカリング力が働いているためである。一方、弱アンカリング力による低電圧駆動化も報告されている。そのほとんどが、面内電界を印加することで、弱アンカリング力界面上の液晶分子を基板上で回転させるものである。

 アンカリング力を制御する技術とともに、界面も含めた液晶素子の自由エネルギーを考慮することで、弱アンカリング力がもたらす新規な光学特性とそのデバイス応用に関する技術について研究されている。

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