故ザハ・ハディド氏の遺作で建設中のプロジェクトは、数十あると言われているが、没後、英国内初のプロジェクトが完成した。数学をテーマにしたギャラリーだ。航空機が起こす気流などにインスパイアされた展示。そのうねりや形態を際立たせるのに、ライティングも一役買っている。ライティング・デザイナーがその展示照明について解説する。(菊地 雪代/アラップ)

 展示テーマに「数学の美しさ」を探求した、ウィントン・ギャラリー(The Winton Gallery)。2016年12月にロンドンのサイエンス・ミュージアム内にオープンし、数学的な実践が現実世界でどのように役立っているかを展示している。設計のザハ・ハディド・アーキテクツとともに、アラップは構造と建築設備エンジニアリング、ライティングデザインを担った。

ウィントン・ギャラリー中央部に展示される、ハンドレページの飛行機と乱気流パターンを形態化した3次曲面インスタレーション(写真:© Nick Guttridge B)
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 ギャラリーの中心に据えられたハンドレページ社の木製飛行機は、安全な航空機をつくることを促進する競技会のために、1929年に製作されたものだ。当時の空気力学研究は、この実験的な飛行機の翼設計に影響を与え、飛行の安全性についての世論を変えて、航空業界の未来を確約した。

 このハンドレページの飛行機にインスパイアされた展示計画は、航空機の周りを空気がどのように流れているかを示すように、展示物やベンチ、床のライン、照明が配置されている。そして、飛行機の背後に浮かぶ、3次曲面で構成された膜構造のインスタレーションは、飛行によって起こる乱気流を象徴し可視化したものだ。縁に組み込まれたRGBWのLED照明によって赤紫色から中心部に向かって青色に色相変化し、動きを錯覚させるような、ミステリアスな印象をもたらす。

 この赤紫といった色の設定ついては、チーム内で多くの議論が行われた。複数のオプションを検討し、現場で調整した結果、ほかのベース照明と最もコントラストが付くこともあって選択された。

初期の照明レイアウト図。飛行機の周りを空気がどのように流れているかを示すように、照明配置を検討した(写真:© Arup)
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膜構造の照明手法スケッチ。内照用に色変化するRGBWのLEDを縁に組み込み、中央3カ所に天井埋め込み照明を設置した(写真:© Arup)
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膜構造インスタレーションを背面から見る。組み込まれたLED照明が赤紫から青色と色相を変え、インタラクティブで魅力的な展示に寄与している(写真:© Arup)
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